消費税増税延期決定|株や為替に与える影響は?その背景を考える―
▽消費税増税延期をめぐる背景
安倍首相は5月13日、2017年4月に予定していた消費税増税の先送りを決定した。これまでの安倍首相の発言を見ている限り、「消費税増税は必ず行われる」と思っていた人も多いでしょう。しかし昨年から現在にかけての株価や為替状況を見る限り、今回の消費税増税の延期は「計画的に」行われたものとして断言できます。
まず、消費税に関わらず増税のためには経済状況が改善していることが前提条件です。経済状況が良くないと、増税は消費意識の減退につながり、さらに状況を悪化させるだけだからです。今の日本経済の状況は株価や為替、企業業績、そしてCPIなどの経済指標を見ている限りお世辞にも良い状況とは言えず、消費税増税のための土壌が整っていないと判断できます。しかし、安倍首相はアベノミクスの経過目標として2017年4月の増税は必ず達成すると公言してきたため、今回の増税延期は「公約違反だ」として野党からの大きな反発を受けているわけですね。だからこそ、海外から著名なエコノミスト等を日本に招いて、「消費税増税は延期すべき」との発言を、自らの口からではなく、彼らに代弁してもらっていたわけです。
今回、このタイミングでの消費税増税の延期発表は私にとってはサプライズでした。正直、シナリオとしては今月末に開催されるサミットの後に増税延期を発表すると思っていたからです。何が原因でスケジュールを早めたのか分かりませんが、おそらく多くの市場参加者にとってサプライズだったに違いありません。理由についてですが、私の予想としては、ドイツのメルケル首相が安倍首相が目指す「財政出動の国際協調(※後述)」に対して消極的な態度を示しているため、日本が先陣を切って、いかに真剣な姿勢なのかを今月末の伊勢志摩サミットの前に示し、ドイツの同調を誘いたかったのだと思います。
▽為替と株等のマーケットへの影響
これはとても重要な項目です。結論から言うと、「為替は円安に」、「株は株高に」動きます。
まず消費税の増税が延期されたということは、一般の国民や企業が支払う税金が少なくて済む(正確には現状維持ですが)ということです。これはもちろん、個人の各家計や企業決算にはプラスに影響しますよね。ですから個人消費関連の指標や企業の業績や設備投資額など、様々な指標が上向きに出てきます。これがマーケットにリスクオンの空気を作り出し、株高、円安へと向かっていくのです。
しかし、これはあくまで日本経済単独で考えた場合の話。現在は世界経済が非常に不安定な時期にあり、G20でも何度か話し合われているように経済の持続的発展のための「国際協調」が重視されています。日本だけ先走りして消費税増税を延期したところで、マーケットに本当の意味でのリスクオンの空気を作り出すことができません。
では、今後は何に注目か?それが、今月末に日本で開催される伊勢志摩サミットなのです。このサイトの過去の記事にもあるように、伊勢志摩サミットでは「財政出動」の国際的な協調について話合われます。各国が行っている金融政策が限界に来ており、世界経済立て直しのためには財政の出動が急務だからです。良くも悪くも、このサミットで今後のマーケットが間違いなく決まります。下記2つのシナリオです。
・伊勢志摩サミット後の2つのシナリオ
1、財政出動の国際協調ができた場合
ニューヨーク、東京、ロンドンの各市場で株が買われます。世界経済は「金融政策」、「財政出動」の2本の柱によって緩やかに、しかし確実に回復していきます。この場合、リスクオンですので、日本株を含めた世界株は買い、為替については円安になります。
2、財政出動の国際協調ができなかった場合
各市場がリスクオフになります。過去の金融危機レベルの暴落こそありませんが、緩やかに日本株含む世界株は下落し、かつ円高が進行するでしょう。世界経済は「金融政策」のみに支えられ、その効果が景気に反映されるまでには、最低でも1年程度の時間を要するでしょう。
上記2つのシナリオのどちらになるかは、財政出動に慎重な考えを示しているドイツのメルケル首相の決断次第であり、サミットが終わった後の声明を聞かなければわかりません。しかし、私個人の予測としては「財政出動の国際協調ができる」と思っています。ですから、株は「買い」でサミット前に仕込みます。
皆さんも、ご自身でサミットに対してのマーケットシナリオを組み立ててみましょう。これほど大きいイベントはあまりありませんから。
~編集後記~
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